小泉信三「海軍主計大尉小泉信吉-後記」

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海軍主計大尉小泉信吉

後記
横山大観画伯は本書の為め富士を描いて贈られたのに残念にもそれを昨年の空襲で失つてしまつた。画伯は、一日突然私にも告げずに推参した和木清三郎氏から信吉のことを聴かれ、快く氏の乞いを容れて特に筆を揮つて下さつたのである。その後間もなくの空襲に私も負傷して入院し、半年余りを経て漸く退院して初めて画の印刷所製版所と共に焼けたことを聞かされた。横山画伯の御好意に対しては何と御礼の言葉もなく、同時にそれを空しくしたことは悔みても余りある。申し訳ないことである。茲に事の次第を記してこの画伯の好意を伝へたいと思ふ。以下略

昭和二十一年五月末 小泉信三 

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