R・シュトラウス〈ばらの騎士〉

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ばらの騎士

時と場所:18世紀中頃、マリア・テレジア治下のウィーン
登場人物
マルシャリン:元帥夫人
オクタヴィアン:伯爵家の若き貴公子、マルシャリンの年下の愛人
ゾフィー:オックス男爵の婚約者
ファーニナル:新興貴族、ゾフィーの父
オックス男爵:好色な田舎貴族 ほか

第三幕後半、元帥夫人はオクタヴィアンとゾフィーの前から、身をひくことを決意する。
〈元帥夫人のモノローグ〉
私は固く誓った、彼を正しいやり方で愛すると、他の女に対する彼の愛でさえ愛すると!でもそのことがこんなにすぐに私に課されるとは思ってもいなかった。
世の中にいくつかある、人が語っているのを聞いても信じることのできないことの一つなのね。ただそれを経験した者だけがわかること、そしてそれでもどうしたらいいかはわからない…

〈ゾフィー〉
私は教会の中にいるように神聖な気持ちで、そしてとても不安で、そしてまたちっとも神聖でなくもある!自分がどうなっているのかわからない。教会の中にいるよう…とても神聖で…とても不安で…
あそこであのご婦人の前に跪いて彼女に何かを示したい。でもそうしたら、彼女が彼を私にくれ、また同時に私から彼の一部を取り上げたと感じるわ。ちっともわからない、私がどうなっているのか。
〈オクタヴィアン〉
これが起きたこと、これがなされたこと。
彼女に聞きたい、こうでよかったの?そしてまさにその問いこそ、彼女が僕に禁じていることだと感じる。彼女に聞きたい、彼女に聞きたい。なぜ、なぜ僕の中で何かが震えるの?なにか大きな間違いが起こったから?そしてまさにそれを、まさにそれを僕は聞いては、聞いてはいけないのだ。
〈元帥夫人〉
ここに坊やが立っていて、ここに私が立っていて、そして彼はあそこの見知らぬ娘ととっても幸せになって、結局男たちが幸福であると考えるような形で。
〈ゾフィー〉
全てを理解したいし、また何も理解したくない。尋ねたいし、尋ねたくない。熱くなったり寒くなったりするわ。そしてただあなたを感じる そしてわかるのはただ一つ、あなたを愛している。
〈オクタヴィアン〉
そして僕は君を見つめる、ゾフィー、そして君だけを見て、君だけを感じて、ゾフィー、そして君だけを見て、君以外のことは何もわからない、君を愛している。
〈元帥夫人〉
神の御名において、あるがままに。
〈オクタヴィアン〉
君だけを感じる、君一人だけを感じる、そして僕達が一緒にいることだけを!すべてが夢のように僕の感覚から消えさってしまう。
〈ゾフィー〉
これは夢、本当ではありえないわ、私たち二人が一緒にいるなんて、ずっと、永遠に一緒にいるなんて!
〈オクタヴィアン〉
一軒の家があった、その中で君は待っていた、そして人々が僕をその中に送った、僕をまっすぐ至福へと!彼らこそ賢明であった!
〈ゾフィー〉
笑うことができるの?私は天国の入口に立ったかのように不安な立場にいます。私と言ったら!私のように弱い人間はあなたの方へ倒れてしまうわ。
〈ファニナル〉
こういうもんですな、若い人達は!
〈元帥夫人〉
ええ、ええ。
〈オクタヴィアン〉
君だけを感じる、君一人だけを感じる、そして僕達が一緒にいることだけを!すべてが夢のように僕の感覚から消えさってしまう。
〈ゾフィー〉
これは夢、本当ではありえないわ、私たち二人が一緒にいるなんて!ずっと、永遠に一緒にいるなんて。
〈オクタヴィアン〉
君一人だけを感じる、君一人だけを。
〈ゾフィー〉
あなた一人だけを感じる。

[彼の腕の中に崩折れる]
[彼は急いで彼女に接吻する。彼女は無意識のうちに、ハンカチを手から取り落とす。それから彼らは手に手を取って走っていく]
[するともう一度中央の扉が開く。子供が蝋燭を手に入ってくる。…ハンカチを探す…見つける…取り上げる…早足で出ていく]

[幕が下りる]

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