永いこと私は夕暮れを待つてゐた。日が没しようとするとき空氣の密度が増し、静寂が支配する。稍、紫がかつた濃密な気配が感じられると私は屋上へ駆けあがつて倦かず暗くなるまで立尽してゐた。其処で私はなにを待つてゐたのだらう。いま思ふに、それは間もなく近づきつつある星への、不安に彩られた予感であつた。