ドラクロア「ショパンの肖像」

l c ダフニスとクロエ
ショパン
ドラクロアの描いた有名なショパンの肖像画がある。画家が見つめたのは、誰とも心を通はせることのない、一人の音楽家の孤独な姿であつた。彼の音楽はロマンティックな印象を与へるが、その底に漆黒の闇がある。もし画の中のショパンが正面を向き、左の顔面に醜い痣がみとめられたとしても、私は少しも驚かないだらう。左目も、つぶれてゐるやうにさへみえる。ショパンの音楽には神がゐない。彼の音楽を愛するといふ事は、彼のピアノの音を信仰するという事なのだらう。
しかし彼の愛した楽器、プレイエルは今はない。
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