ブライアン・オールディス「地球の長い午後」 |
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「地球は燃える死を迎えるのだぞ、愚かものめ!」 「そういったっけな、賢いアミガサは。だけど、こうもいったぜ、あと何十世代かはだいじょうぶだって。レアレンも、その子供も、そのまた子供も、緑の中で暮らせるんだ。どこへ行くともわからない植物の腹の中でひからびるよりはましだよ。行こう、ヤトマー。ハップ・ホー、女、ついて來い」 彼等は行動を起こした。ヤトマーは赤んぼうをグレンにあずけて、刺青の女を押した。彼は肩に赤んぼうを抱き上げた。ヘアリスがナイフを抜いて、一歩踏み出した。 「おまえはいつも聞きわけがない。どういうことか知っているのか?」 「聞きわけはないかもしれないけど、自分が何をしているかぐらいはしっているよ」 ヘアリスのナイフを無視して、グレンは巨大な毛むくじゃらの橫腹をゆっくりとおりた。従順な〈畑作り〉に手を貸しながら、彼らは細い枝に足を置いた。グレンは葉のうっそうと繁る森を見おろし、思いっきり幸福感を味わった。 「行こう」彼はみなを励ました。「ここが家だ。危険は揺りかごさ。今まで覚えたことが、ぼくらを守ってくれる! そら、手をのばして、ヤトマー」 グレンたちは手をつないで葉かげへと下った。そして、乗客をのせたツナワタリがゆっくりとゆっくりと緑の斑点のうかぶ空へあがり、宇宙の荘厳な青の中に消えてゆくのを、一度もふりかえって見ようとはしなかった。 |
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