人と草木と家が、同じ時を生きて造り上げた
Kさん宅は、阿佐ヶ谷駅から北に抜ける古い路地沿いにある。昭和初期に建てられた数軒の住宅が、生け垣をつらねて今も残る一角のその中ほどに、庭木に埋もれるように、ひっそりとしたたたずまいを見せている。
たからもの……、そう表現するのが一番ふさわしい。
ー略ー
簡素な白いペンキ塗りの門から、踏み石がやっと人ひとり通れるスペースで、外からは見えない入り口につづいている。家は決して大きくない。下見板張りの、窓を白くペンキで塗った平屋である。雨樋以外、増築も改築もせずに、洋風の文化住宅がほとんどそのまま残されているのも驚きだった。
ー略ー
Kさん宅を辞すとき、門の脇の小さな池をのぞいて、すっかり分かったような気がした。雨水をためているだけの、コンクリートの池なのに、金魚藻と睡蓮がすっかり落ち着いて、水が澄みきっているのであった。
私はしあわせだった。
宮崎駿著「トトロの住む家」 |