シモーヌ・ヴェイユ「重力と恩寵」その2 |
||
魂の自然な動きはすべて、物質における重力の法則と類似の法則に支配されている。恩寵だけが、そこから除外される。恩寵でないものはすべて捨て去ること。しかも、恩寵を望まないこと。 愛は、わたしたちの悲惨のしるしである。神は、自分をしか愛することができない。わたしたちは、ほかのものをしか愛することができない。 人間のあいだでは、自分の愛している人たちの存在だけしか、完全には目につかない。 他の人たちがそのままで存在しているのを信じることが、愛である。 愛には、実体が必要である。肉体という仮象をとおして、想像上の存在を愛していて、ある日、それに気づいたとしたら、このこと以上に無惨なことがあるだろうか。死よりも、はるかに無惨である。なぜなら、死によっても、愛する人が存在していたという事実にかわりはないのだから。これは、想像によって愛を育てていた罪に対する罰である。 神は不在というかたちをとらないかぎり、天地万物の中に現存することはできない。 |
||
home notes13 gallery13 |