シモーヌ・ヴェイユ「重力と恩寵」その2

マンハッタン・キス   夜はやさし
ヴェイユ

魂の自然な動きはすべて、物質における重力の法則と類似の法則に支配されている。恩寵だけが、そこから除外される。恩寵でないものはすべて捨て去ること。しかも、恩寵を望まないこと。
この世の現実は、わたしたちがわたしたちの執着をもってつくり上げたものである。それはあらゆるものの中に、わたしたちが運びこんだ「われ」の現実である。そんなものは全然外部の現実ではない。外部の現実は、全く執着を離れたときに、やっと感じとられるのである。

愛は、わたしたちの悲惨のしるしである。神は、自分をしか愛することができない。わたしたちは、ほかのものをしか愛することができない。

人間のあいだでは、自分の愛している人たちの存在だけしか、完全には目につかない。

他の人たちがそのままで存在しているのを信じることが、愛である。

愛には、実体が必要である。肉体という仮象をとおして、想像上の存在を愛していて、ある日、それに気づいたとしたら、このこと以上に無惨なことがあるだろうか。死よりも、はるかに無惨である。なぜなら、死によっても、愛する人が存在していたという事実にかわりはないのだから。これは、想像によって愛を育てていた罪に対する罰である。

神は不在というかたちをとらないかぎり、天地万物の中に現存することはできない。

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