マリリン・モンロー、…うつくしい子供

君がまだ知らぬ   モガリ笛
うつくしい子供
コリアー女史は次のように知らせてくれた。「ええ。そうよ。なんかこうあるのよね。あの娘って、うつくしい子供なのよ。と言っても、わたしはわかりやすくいっているつもりはないのよ。あの娘は女優なんかじゃないと思うのよ、あの娘の持っているものーあの存在感、あの聡明さ、あの才気煥発さは、けっして舞台には出ないわ。とっても脆くて微妙だから、映像でしか捉えられない。飛んでいるハチドリみたいなもので、カメラしかその趣を固定できないって訳ね。でも、単純にあの娘は、ハーローの二代目だとか思っている人は、頭がおかしいのよ。おかしいと言えば、一緒にやったのよ、《オフェリア》をね。皆が知ったら笑うと思うけど、あの娘こそがほんと見事なオフェリアだわ。
このうつくしい子供は、修行とか犠牲とかの概念に当てはまらないのよ。なんだか、あの娘、長生きしないだろうなって思うの。言ったらなんだけど、なぜかしら若死にするって感じ。だから、あの娘が長生きして、閉じこめられた精霊のように、彼女の体中をさまよっている奇妙で美しい才能を、充分に発揮できるよう思っているどころか、願ってもいるってわけなのよ」

ミス・コリアー…1880年英国生まれのシェイクスピア劇女優。後米国に移住し、晩年は演劇のコーチとして、オードリ・ヘップバーンその他、有名な女優たちを弟子にし、最後の生徒はマリリンモンローだった。
homegallerynotes トルーマン・カポーティ「うつくしい子供」
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