君がまだ知らぬゆかたをきて待たむ風なつかしき夕べなり 若き日にひとたびは言はむとあくがれき海柘榴市に立ちて待ち給へかし ぼうたんは狂はねど百花乱るれば苦しきに似たり恋ぞかがやく ふと思へばわれ情あつく愛淡きこと折ふしのあやまちなりや 夜蝉一つじじつと鳴いて落ちゆきし奈落の深さわが庭にあり つゆの身のつゆの世ながら狂ふべし鬼ならば青き精神の鬼