見ぬ世まで思ひのこさぬながめよりむかしに霞む春のあけぼの
見ぬ世と見つつある世の間の春霞、来し方二十五年を包むその曙の霞は幽界までたなびく。「思ひのこさぬ」と言ひながら思い残すことのあまたをすべて思ひ切つた良經の眼には、あるいはただ一つの未知の領域、犯されぬ夢の国である「見ぬ世」の、現世に等しいむなしさすら除除に見えはじめてゐたのではあるまいか。