ポラーノの広場 |
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あのイーハトーヴォのすきとほつた風、夏でも底に冷たさをもつ青いそら、うつくしい森で飾られたモーリオ市、郊外のぎらぎらひかる草の波。 またそのなかでいつしよになつたたくさんのひとたち、フアゼーロとロザーロ、羊飼いのミーロや、たくさんの顔の赤いこどもたち、地主のテーモ、山猫博士のボーガント・デステウパーゴなど、いまこの暗い巨きな石の建物のなかで考えてみますと、みな、むかし風のなつかしい青い幻燈のやうに思はれます。 そのとき、向うのつめくさの花と月のあかりのなかに、うつくしい娘が立つてゐました。 フアゼーロが言ひました。 「姉さん、この人だよ。ぼく地図をもらつたよ。」その娘はこつちへ出てこないで、だまつておじぎをしました。 「じや、さよなら、早く行かなくちや。」フアゼーロは走り出しました。ロザーロはもいちどわたしに挨拶して、… … けれどもその歌をつくつたのは、ミーロかロザーロか、それとも誰か、わたくしには見わけがつきませんでした。 |
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宮沢賢治「ポラーノの広場」 | ||||
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