F・H・バーネット「小公女」 |
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第十一章 ラム・ダス ふいに、あたりが夢のように明るくなって、すすだらけの木や手すりまで美しく見えはじめると、セーラはすぐ、空になにがおこっているかがわかった。そんなとき、さがされたり、呼びもどされたりしないで台所をぬけだせるかぎり、セーラはいつも、そっと階段をのぼっていって部屋にはいり、古いテーブルにのっかって、顔もからだも、できるだけ窓からのりだす。それから、思いっきり深く息をすって、あたりを見まわす。すると、ひろい空も世界もなにもかも、自分のものになったような気がしてくる。 ー略ー セーラは、テーブルにのっかって、外をながめていた。金をとかしたような雲が西空いっぱいにひろがって、光かがやく津波が世界におしよせているようだった。そのせいで、屋根をこえてとぶ鳥たちが、影のように黒く見えた。 「なんてきれいな夕焼けでしょう」 セーラはそっと、ひとりごとをいった。 「なんだか、おそろしいくらいだわ。なにか、変わったことがおこるような気がするわ。あんまりきれいな夕焼けを見ると、いつもそんな気がするわ」 中山知子訳 |
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