武満徹・作曲、谷川俊太郎・詩「系図」

死者の書   丘の上の悪魔
武満徹

とおく

わたしはよっちゃんよりもとおくへきたとおもう
ただしくんよりもとおくへきたとおもう
ごろーよりもおかあさんよりもとおくへきたとおもう
もしかするとおとうさんよりもひいおじいちゃんよりも
ごろーはいつかすいようびにいえをでていって
にちようびのよるおそくかえってきた
やせこけてどろだらけで
いつまでもぴちゃぴちゃみずをのんでいた
ごろーがどこへいっていたのかだれにもわからない
のままずうっとあるいていくとどこにでるのだろう
しらないうちにわたしはおばあちゃんになるのかしら
きょうのこともわすれてしまって
 おちゃをのんでいるのかしら
そのときひとりでもいいからすきなひとがいるといいな
そのひとはもうしんでてもいいから
どうしてもわすれられないおもいでがあるといいな
どこからかうみのにおいがしてくる
でもわたしはきっとうみよりももっととおくへいける

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