今、ぼくは語らうと思ふ。 君が「あちら側」へ行つてしまつてから、ぼくは君の名前を忘れてしまつた。どうしやうもなく好きだつた君、そして君と飲むビール、夏の光や風の匂い。 あらゆるものは通りすぎる。誰にもそれを捉へることはできない。僕たちはそんな風にして生きてきた。この写真の君も日に日にうすれていく。でも完璧な写真などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないやうにね。