塚本邦雄「煉獄の秋」 |
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夏のいと暑き日盛りに同じ男のよみたりける 「愛するものが愛されるものに囁く言葉と心のあはれを傳へる以外に相聞の意味はなく、贈答が男から女に女から男に、時には女から女に、男から男へのいづれであらうと作品の美しさはいささかも損なわれはしない。 山川に聲きくよりは紅の人目ばかりもまづ見てしがな しかし、かつての日の赤翡翠のくれなゐの聲には比べやうもあるまい。「夏の日の燃ゆるわが身の侘びしさに」の火は「水戀鳥」の水とひびきあひ(中略)いづれ火の性水の性、火中(ほなか)に立つて問ふのも、かけがへのない愛、その愛を貫くためであつた。 |
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