保田與重郎「日本の橋」・オーヴェルニュの歌

風立ちぬ   DONT WORRY
オーヴェルニュの歌

「そして日本の橋は道の延長であつた。極めて静かに心細く、道のはてに、水の上を超え、流れの上を渡るのである。ただ超えるといふことを、それのみを極めて思い出多くしようとした」

「ものの終はりが直ちに飛躍を意味する、そんなことだまを信仰した国である。日本の美心は男と女との相聞の道に微かな歌を構想した。それは私語の無限大への拡大として、つねに一つの哲学としてさへ耐え得たのである。
ものをつなぎ、かけ渡すといふ心から、橋と愛情相聞の関係は、随分に久しいもののやうである。万葉集巻九の、河内大橋を独り去く娘子を見る歌一首並びに短歌の作は、やはりここにもひきたい」
保田與重郎・日本の橋

しなでる 片足羽川の さ丹塗りの 大橋の上ゆ 紅の 赤裳裾引き 山藍もち 摺れる衣着て ただひとり い渡らす児は 若草の 夫かあるらむ かしの実の ひとりか寝らむ 問はまくの 欲しき我妹が 家の知らなく
大橋の つめに家あらば ま悲しく ひとり行く児に 宿貸さましを

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