開高健「飽満の種子」

シナラ   虹たちぬ
ポリネシアへの道

昂揚もなく、下降もない。沸騰もなく、沈殿もない。暑熱もないが、凍結もない。希望もなく、後悔もない。期待もないが、逡巡もない。善もないが、悪もない。言語もなく、思惟もなく、他者もない。ただのびのびとよこたわって澄みきった北方の湖のようなもののなかにありつつ前方にそれを眺め、下方にそれを眺める。おだやかで澄明な光が射し、閃きも翳りもなく揺蕩している。

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