高浜虚子〈虹たちぬ〉森田愛子

ポリネシア   優しき歌
虹たちぬ

昭和十八年鎌倉在住の俳人高浜虚子は、病を得て三国に帰郷した愛弟子、森田愛子を見舞ふ。そのとき虹がたつた。
「あの虹をわたって鎌倉へ行きませう」と愛子。 翌年疎開先の小諸で虹を見た虚子は、愛子に葉書を書く。「 虹たちて忽ち君の在るごとし、 虹きえて忽ち君の無きごとし」 虚子は二十一年、愛子を再び見舞ふ。翌二十二年三月、風邪で寝込んでゐる虚子の下に、愛子から電報が届く。
「ニジキエテスデ ニナケレド アルゴ トシアイコ」

「虹の上に立てば小諸も鎌倉も」
二十二年四月一日、愛子死去、享年三十才

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