スタンリイ・エリン「鏡よ、鏡」

マチルデの夢   北方の海
鏡よ、鏡
「居間の録音機から、『カルミナ・ブラーナ』が、ながれている。カール・オルフの手になるもので、私の恐怖のバックグラウンド・ミュージックをなしている。大柄で豊満な女たちの生きた肉体が、ビールの杯を上げ、テナーの歌声に応えて咆哮する。快楽への賛歌のコーラス。
『オリム・ラクス・コルエラム』と、テノールが歌う。
『もうたくさんだ!』私は命じる。『黙れ!』
一瞬耳鳴りの聞こえるほどの静寂。部屋の内も外も、不自然な沈黙に包まれる。
ああ、あの死体も、あの拳銃も、おなじ魔法で消すことが出来れば」

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