月の光のしずかにすべりゆくとき、想ひがすべてのうへに在るとき、我が目には波はうなばらと映らず、森は樹々のあつまりとはみえず、天空をかざるは雲にあらず、峪や丘はもはや地のおきふしとはみえず、うつし世はうたかたの如、すべては神々のみたまふ夢のなごりなり。 シェーンベルク「グレの歌」
恐ろしき母子相姦のまぼろしはきりすとを抱く悲傷の手より
2016.08.05「ブラームスは好きですか」
立花隆「武満徹・音楽創造への旅」
ー若いころ、初めから現代音楽ばかり聞いていて、いわゆるクラシックの名曲はほとんど聞かなかったというはなしでしたね。
「そうなんですよ。バルトーク、メシアン、シュトックハウゼンまで聞いていました。とにかく、新しいもの新しいものと思っていたんですね」
ーそれで、古典的大作曲家のものはあまり聞かずに通りすぎてしまったとか。
「そうなんです。特にロマン派のものなんかあんまり聞いていません。毛ぎらいというか、食わずぎらいというか、ブラームスなんかバカにして全然聞いていなかったんです。ところが最近、ブラームスのよさに急にめざめまして、……」
以下、ブラームス「クラリネット・ソナタ」の素晴らしさに、話がつながつていく。
私も、シューマン、ブラームスなど、ロマン派を聞くようになつたのは、中年すぎからだつた。それまでは生意気な子供で、バルトーク、ウェーベルン、ブーレーズ等の現代音楽を愛好してゐた。
ロマン派受容の経過は武満徹とおなじでも、私には作曲の才能はない。作曲できない私が、サン・テグジュペリの「夜間飛行」をオペラにするとしたら、重要人物リヴィエールを「レティタティーヴォ」にする。これで決まりだ。